じぶん書店

宵の口書房
傭兵の二千年史

傭兵の二千年史

菊池良生 | 書籍

推しコメ

何のために戦ってきたか、とても問題だ

中世ヨーロッパに詳しい著者による、古代ギリシャから近世、近代までのヨーロッパの傭兵の歴史についての本です。「はじめに」にあるように祖国愛、ナショナリズムがいかにして形成されたか、が裏テーマとなっています。共同体を護るのは誰か、それはどのように変遷していったか。その断面の一つが傭兵であり、そこに焦点を当てた物語をつづったのがこの本です。 クセノフォン。マリウス。スイス傭兵。ランツクネヒト。フルンツベルク。マウリッツ。ヴァレンシュタイン。グスタフ・アドルフ。ルイ十四世。フリードリッヒ二世。そしてフランス国民軍、フランス外人部隊。これらが人物を主とした本書のキーワードです。そして、これらのキーワードを眺めているとある言葉が浮かんできます。組織運営。戦場でどのように部隊を動かすか、もさることながら戦場に赴く前にどのような組織をつくりあげるか、が重要なテーマとして浮かび上がってきます。訓練、規律、そして動機。何故に戦い、その背景に何があったのか。それらが時代時代で移り変わりゆく様子がよく描かれていて、今の状況、つまり祖国のために戦うという価値観も現代を支えている何かしらの要素が変化すればまた新たな局面になるのではないか、そんな考えが過(よぎ)りました。 余談ですが、オランダの軍事指導者マウリッツについては、外交官だった故・岡崎久彦著の「繁栄と衰退と オランダ史に日本が見える」にも記述があったのでこれを機会にお勧めしておきます。これはこれでヨーロッパの状況や歴史を知るのにいい本です。また、アメリカ独立戦争でイギリス軍に約三万人のドイツ人傭兵が加わっていたことを初めて知りました。ドイツではこの歴史を教えているでしょうか。これに対する総司令官ジョージ・ワシントンの対策も考えたもので、これもある意味組織運営の一種だと感心しました。 最後に。この本だけでナショナリズムを語るのは不十分な気がするので、他の、それこそナショナリズムをテーマにした本も読んだほうがいいと思いました。逆にいうなら、ナショナリズム関連の本については軍事的な視点は欠けているかもしれないので、それを補う意味でも本書の意義を感じました。

ハッシュタグ

    #講談社現代新書 #菊池良生 #傭兵 #軍事 #ヨーロッパ #ヨーロッパの歴史 #歴史 #戦争

この作品を登録している書店