じぶん書店

一巻読破のじぶん書店

よろこびのうた

    1巻

  • ウチヤマユージ
  • コミック
  • 540コイン
  • 北陸の勝野市、田園地帯の集落で火葬場から老夫婦の焼死体が見つかる。警察は老老介護の末の心中と結論付ける。事件から半年後、東京で週刊誌記者をしている伊能は取材ため勝野市を訪れる。近隣住民の口は重く難航する取材のなか伊能は、地域の雑貨屋の駐車場に残る濃いタイヤ痕、焼死した夫婦が事件の半年前に車を買い替えたこと、挙動不審な小学生という三つの『不自然』に気付く。それは事件の深淵へ至る第一歩であった。

老々介護の無理心中事件を追った記者が知った 真実とは。素晴らしき逸品。

本作は、人間の尊厳を描く話ではあるが、老老介護について 独特なアプローチをとって描いた作品である。 痴呆症、というブラックボックスを使ったミステリ ともいえる。記者は真相を突き止める探偵でもある。 しかも無遠慮に。本作の場合、救いは、彼は切れはするが 無神経にバリバリ突き進むタイプのようには見えず、 また、この話の真相は明らかにするには障害が多いことである。 こうした背景のある話は世間で表に出ることはない、 逆にいえば世間に出ている話は話せないことのないこと、 あるいは話せないことは話さずにオミットして いるということでもある。まぁ実際そうだろう。 というメディアの話は正直どうでもよい。 記者を主人公にしたのは物語をスムーズに導くための 狂言回しとして適役だったからにすぎない。 本質は、田舎で起きた悲劇であり、しかし田舎だからこその 理想的な幸せな最期でもある。ただ、土地に還りたい、とする発想は 農耕民族ならではだろう。 良作だと聞き内容も朧気に耳にしていたが、 こんな構成の作品であるとは思わなかった。 ぐいっと引きこまれ一気に読んだ。これは傑作である。